こんにちは!NCA編集部長です。私は日々、フリーランスを目指す看護師を応援していますが、「経費」を軽視している人は実際かなり多いです。たしかに、フリーランスになったばかりであればそもそも売上が多くなかったりするので、経費もそこまで重要ではないかもしれません。それより、売上を伸ばすことに集中したほうが良いですよ、とアドバイスすることもあります。
しかし、少しずつ売上が伸びてきて初めての確定申告、そこで初めて「経費」ってどうするんだっけ?と悩む人が非常に多いのも現実です。経費を知らないと節税で損をするだけでなく、確定申告に多くの時間がかかってしまったり、間違った申告であとからめんどうなことになったりするかもしれません。
始めはそこまで重要ではないけど、ちゃんとやっておかないとめんどうになるのが「経費」というものです。この記事では、フリーランス看護師が適切に経費を計上するための考え方や、看護師系のお仕事で経費になるものの具体例を紹介します。フリーランスでやっていくのであれば、いつかは絶対に知っておかないといけないものなので、ぜひ最後まで読んでみてください。
経費の考え方と管理する理由
まず始めに、そもそも経費とは何か、なぜ管理しなければいけないのか、どういうものが経費になるのか、などを理解するための考え方について解説します。「この支払いは経費になる」「あれは経費で落とせない」とひとつひとつ覚えていく必要はなく、考え方さえわかっていれば自分でも判断できるようになります。
経費とは?
経費とは、「事業を運営する際に発生する費用」のことです。つまり、そのかかったお金が「事業をするうえで必要なものかどうか」です。フリーランスかどうか、看護師かどうかは関係なく、考え方はどの事業者も同じです。事業に必要な出費であれば経費になりますし、事業と関係のない出費は経費になりません。
所得税などの税金は自分の「所得」に対して課税されます。所得とは、自分が稼いだ「売上」から、事業で必要な出費である「経費」を差し引いた金額のことです。つまり、経費が多ければ多いほど、所得は少なくなり、課税される税金も少なくなるということです。
何が経費になるか?
たとえば、以下のような出費は経費になります。
- 業務で使用する器具や消耗品
- 仕事に関連する交通費や宿泊費
- 業務用の通信費
- 事務消耗品費
- 専門書の書籍代
職種別にもう少し詳しい経費の実例については、後ほど挙げます。事業のために使ったお金は、とりあえず経費になるということを覚えておきましょう。
経費管理をする3つの理由
「経費で落ちる、落とせない」という言葉は、最近はドラマなどでもよく耳にしますが、「経費ってなんとなく知ってるけど、よくよく考えると一体何なんだろう。落とすとどうなるんだろう?」と思う人も多いのでは?
その答えは、こちらです。
- 確定申告に必要
- 合法的に節税できる
- 税務ペナルティを避けられる
フリーランスでお金を稼いだ場合、主に所得税や住民税などの税金を支払わなければいけません。これは法律で決まっています。日本では、所得税や住民税については自己申告なので、1年にいちど確定申告をして税務署に自分の所得(売上や経費など)を報告します。
所得は自己申告制なので、自分で売上がいくらか、経費がいくらかを確定申告という形で税務署に報告します。税務署の人がやってくれるわけではないので、数字が間違っていても少額であればそのまま気づかれずに受理されてしまいます。
ただし、税務署に見つかると数年遡って追徴課税(過去に支払った納税額に対して誤りや不足があった場合に、差額を補填するために支払う税金)を請求される可能性もあります。脅すわけではないですが、追徴課税は通常支払うべきだった税金のほかに、延滞税や過少申告加算税、重加算税などが状況に応じて加算されるので、できるだけミスのないように申告するのが身のためです。
私の知り合いの税理士に聞いた話ですが、逆に多く税金を支払いすぎていた場合、単純な計算ミスや記述ミスであれば指摘してくれることもあるそうですが、基本的には税務署から指摘されることはほとんどないそうです。自分で気付いたときに訂正申告をすれば還付を受けられる可能性もありますが、手続きもめんどうなのでできるだけそうならないようにしたいところです。
そもそも最初から経費を適切に計上しておけば、正確な所得が算出できて、適正な税金を納付できます。経費計上により課税される所得を減らし、合法的な節税が可能ということです。
フリーランス看護師が経費にできるもの
フリーランス看護師が一般的に経費にできるものについて、具体例を挙げてみます。開業前から使ったお金も経費にできるので、初期費用から順に見ていきましょう。
開業にかかる初期費用
開業にかかるもので、経費にできるのは以下のようなものがあります。
- パソコン、プリンター
- オフィス家具(デスク・イス・収納など)
- 文房具(ペン・ノート)
- 名刺作成費用
初期費用については、税務署に開業届を出す前に発生したものでも、経費になります。開業のどれくらい前までの費用が認められるかについては、明確な規定はありませんが、常識的な範囲で考えられる費用が対象です。たとえば、事業計画の作成や、準備が本格的に始まった時期から発生したものが、経費として認められることが多いです。もちろん、上記の商品やサービスも、事業に必要のないものであれば、経費で落とすことはできません。
運営にかかる費用
フリーランス看護師として事業を始めて、毎月固定でかかる費用や、必要な消耗品なども経費になります。経費は合法的な節税手段なので、事業に必要なものであれば遠慮せずに確実に経費で落とすようにしましょう。
- 賃料
- 自宅から仕事先までの交通費
- スマホ、インターネットなどの通信費
- 使い捨ての医療用品(マスク、手袋など)
- 器具のレンタル代
- 会計ソフト利用料
- 税理士や会計士への委託料
- 学会参加費
- 取引先との交際費
賃料や光熱費などは、家事按分(かじあんぶん)と言って、事業でどれぐらいの時間、どれぐらいのスペースを使用しているかによって、その割合分だけ経費にするような方法で計上します。
スマホの通信費についても、プライベートと仕事で兼用している場合は家事按分して一部を経費にしましょう。どの程度を経費にできるのか、目安は以下の表を参考にしてみてください。
スマホ通信料の経費計上割合 | |
全額経費 | 完全に仕事用としている。個人使用していない。 |
7~8割 | 仕事用の通話やメールが明らかに多い。 |
5割 | 仕事とプライベートの使用が、通信量や時間の面で半々。 |
2~4割 | パソコンメインのやり取りで、仕事でスマホは補助的な使用。 |
広告宣伝
フリーランスはサービスを知ってもらうために、宣伝活動もします。宣伝に関わる費用も経費になりますよ。
- ウェブサイト制作費
- チラシやパンフレットの印刷費用
- SNSやインターネット広告費用
ウェブサイト制作費とは、初期にかかるサイト立ち上げの費用に加えて、サイトを維持するためのサーバー代や制作会社への委託費用などがあります。最近はSNS広告やGoogle広告も、集客力のある宣伝方法で、利用している人が多いです。ちなみに弊社サービスのナスキャリでは、まず無料で始められるSNSをおすすめしています。
経費にならない可能性があるもの
事業の運営に必要そうに思えるものでも、実は経費として認められないものがあります。
- 開業前の資格取得のための学費
- サロンの敷金
- 個人事業主の健康診断費用
たとえば、アートメイクナースになるためのスクールを受講した学費は経費にならない場合があります。新規事業で新しい地位を確立するための教育費は、経費として認められないのです。これは自分への投資として、割り切るしかありませんね。
サロンとして物件を借りた場合の敷金も、経費になりません。理由は、敷金は賃貸契約において借り主に預ける保証金の一種だからです。敷金は、賃貸契約終了時に問題がなければ返却されます。しかし敷金が返却されず、退去時の現状回復費用として実質的な費用として確定した場合は、その費用を経費として計上できます。
雇用されていたときは毎年受けていた健康診断も、個人事業主になると自腹で受けますが、経費になりません。会社では労働安全衛生法によって、従業員に定期的な健康診断の受診がありました。しかし個人事業主になると、労働安全衛生法の対象外です。そのため、フリーランス看護師は定期的な健康診断は求められておらず、経費にもできません。
ただし有害物質を扱う職場での業務など、特殊な環境で働く場合は、法律で健康診断が義務付けられており、経費計上も可能です。
職業別!経費になるもの
ここから、フリーランス看護師の中でも人気の職業に特化して、経費になるものの実例を挙げてみました。これから開業するなら、モレがないかチェックしてくださいね。
アートメイク
アートメイクナースが経費にできるものは、以下のようなものがあります。
- 施術台、マシンなどの施術に必要な備品
- サロンの賃料、賃貸契約金
- サロンの改修費用
- サロンの雰囲気を作る備品
- インク、針など施術に必要な消耗品
- サロンまでの交通費
アートメイクは日本では医療行為の一部とされているので、医療機関の一室を借りて運営することが多く、そのための費用は経費になります。また針や麻酔など、施術に必要な備品も経費にできます。
ちなみに日本では、針や麻酔などは医師免許登録者しか購入できないので、医師に代理で購入してもらう必要があります。もしくは、少しグレーゾーンではあるのですが、アートメイクは海外での研修も盛んで、日本では医師のみの購入に限られるものでも、海外で研修を受けたスクールから個人輸入という形で物品を発注することもあります。
ただし、実際にアートメイクで活躍しているフリーランスの看護師さんたちに話を聞いていると、インクや針やコットンなどは経費としては非常に少額だそうで、「経費の8割か9割は交通費です」というアートメイクナースの方が多い印象です。
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訪問看護
訪問看護は、初期にさまざまな備品購入が発生します。立ち上げ当初は忙しく、経費のことは忘れがちになりますが、しっかり管理していきましょう。
- 看護に必要な備品(血圧計、聴診器、パルスオキシメーター、体温計、爪切りなど)
- 看護に必要な消耗品(消毒用アルコールやアルコール綿、ペーパータオル、ウエットティッシュ、滅菌ガーゼなど)
- 身を守る衣類など(ユニフォーム、使い捨てエプロン、プラスチック手袋、シャワー用エプロン、替えソックス、医療用マスクなど)
- 訪問時に使うカバン
- 訪問車の車両代、ガソリン代
- 車の保険料
- 訪問先での駐車場代
- 連絡用携帯電話
- 看護記録を残すためのタブレット、ソフト
病院勤務時から使っている個人用の聴診器などは、経費にできません。開業するために新しく購入した聴診器なら、経費になります。車両は訪問看護のみの使用で、開業のために購入したなら全額経費になりますが、プライベートと兼用の場合は一部が経費計上できます。
訪問介護の働き方には、「ステーションと契約」と「利用者様と直接契約」の2種類あります。
働き方 | 報酬の受け取り方 | 単価相場 |
ステーションと契約 | 業務委託、派遣は許されておらず、アルバイト契約で賃金を受け取る | 60分4,000円~5,000円ほど |
利用者様と直接契約 | 自費サービスとして直接ご利用者様より報酬を頂く | 60分8,000円ほど |
ステーションと契約してアルバイトとして働く場合、時給制なら経費計上できません。しかし成果報酬性の場合は経費計上が可能です。ステーションが備品や車両などを準備してくれる場合がほどんどですが、訪問時のカバンや使い慣れたメーカーの聴診器などを個人的に購入したものがあるなら、経費として計上しましょう。
利用者様と直接契約で働く場合、「富裕層の患者様のケア」、「外出や旅行の付き添い」などの業務があります。これらの仕事は100%自費サービスとなり、フリーランス看護師として活動できます。活動するには、かかりつけ医と連携が必要。利用者様と直接契約で働く場合、活動に使用した備品などは経費計上可能です。一方保険サービスを使う場合は、1人でのサービス展開は規定の関係でできません。
メディカルライター
メディカルライターは初期投資がほとんどなく、運営しているときもあまり経費はかかりません。
- 文献調査のための図書購入費用
- サブモニターなどのパソコン周りのガジェット類
- 情報収集のためのアンケート、インタビュー調査費用
- 実地調査の交通費などの費用
- レンタルオフィス利用料
- 家賃や光熱費の一部(自宅の場合)
自宅をオフィスとして使用している場合、家賃や光熱費も家事按分で経費計上できます。経費のあまりかからないメディカルライターの節税方法として、家事按分は使っていきたいですね。
経費の発生から確定申告までの流れ
フリーランス看護師になって、経費になるものはたくさんあるけど、申請が難しそうですよね。そこで経費になるものが発生したときから、申請までの流れを詳しく紹介するので参考にどうぞ。
とりあえず領収書をもらう
フリーランス看護師として開業を考え始めてから購入したものは、とりあえず領収書(レシート)をもらっておきましょう。領収書ではなくレシートでも経費の証拠として認められるので、レシートも捨てないようにしてくださいね。法人経理の場合はノートに貼ったり、日付ごとに並べて保管しますが(今は電子保管も多いかも)、大事なのは経費で落とすレシートが手元にあることです。封筒に雑につっこんでおくだけでもまったく問題ないので、確実に保管しておきましょう。
たとえばアートメイクの備品など、ネットでの購入でレシートがない場合は、購入した証明となる画面(購入後の画面や領収証画面、購入の証拠となるメールなど)をスクショしてPDFとして保存し、帳簿と紐づけておけば問題ありません。
領収書の保管期間は、青色申告は7年、白色申告は5年です。領収書をもらったものの、業務に使用しなかった場合は領収書を廃棄しても構いませんが、数年後業務で使う可能性があるなら保管が最適です。
参考:国税庁 電子帳簿保存法 はじめませんか、帳簿・書類のデータ保存パンフレット
領収書を整理し帳簿をつける
領収書をもらったら、整理して帳簿をつけましょう。帳簿のつけ方は、白色申告用の簡易なものと、青色申告用の簿記ルールに則った複式簿記があります。帳簿への記帳の方法は、以下リンクを参考にしてみてください。
税務署に確定申告
12月31日までの経費についてまとまったら、税務署へ確定申告する準備をします。提出書類の書き方は税務署が公開している情報を参考にしてみてください。
白色申告の方:税務署 収支内訳書(一般)の書き方
青色申告の方:税務署 青色申告決算書(一般)の書き方
確定申告では、領収書の提出は必要ありません。集めた領収書は自宅や事務所などで一定期間保管し、税務署からの問い合わせがあれば提出しましょう。
まとめ
経費は、「事業を運営する際に発生する費用」のことです。しっかり経費管理すると、正しい所得計算ができて、適切な節税効果も得られます。
フリーランス看護師が経費にできるものは、開業準備の段階からできるものや、プライベートと仕事で兼用しているものもあります。業種別の具体例も参考に、確定申告に備えていきましょう。